「生涯学習しもすわ」から
消費者こそ原点・湖の自然とのつきあい方

『消費者こそ原点』

前 浄化運動部会担当副会長
下諏訪町衛生自治会連合会前会長(現顧問)
藤 森 利 一


 豊かな自然と人とが共生する下諏訪町を次の世代に引き継ぎたいと思う願いは、国境を越えて人類が協力して取り組む共通課題と言える。我が子、孫を思う気持ちを地域から地球全体に広げるための公共的感性が求められていると思う。
 反面、地球環境の大切さは認識しているが、まだまだ今日の暮らしが大事だという気持ちと根本的な環境破壊までには時間的余裕のあることもあって、危機感は日々の関心事の後に追いやっているのが現状である。
 ましてや自らが環境に与える影響を実感することはむずかしい。しかし財産をなくして、次の世代への思いやりを失ってきているのではないだろうか。私たちは次の世代への付け回しに対する反省を、社会として受け止める良識が希薄になっているのかもしれない。土壌、水、大気や森も、生き物も次の世代の暮らしをくずしていく上に成り立っていると思うと何とかしなければと素直に思う。
 私たちが、今後取り組むべき最重要課題は、たくさん出されてくるごみの減量であると思う。資源・廃棄物処理場には限界があるから、埋めたり燃やしたりするごみの発生を抑制しなければならない。
 生産者側も設計・製造過程での廃棄物の削減に取り組み、企業として顧客満足と環境とを組み合わせた経営の転換に動き出した。消費者には、必要性・価格の是非と同時に、環境への負荷も配慮した購入の仕方が求められる。
 まずは資源物は正しく分別し、ごみになる物は使わないということなどを行いながら、資源循環の最初の工程を担当する側面を持つことになる。この当事者としての意識と行動とが重要であると思う。
 次に環境問題の原点は、ライフスタイルにあると思う。全人類の二割程の先進国の人々が、資源の大量消費、物質の大量廃棄を行っただけで、地球はおかしくなってきている。これからは、あらゆる政策や価値の中心を経済の成長拡大から、社会の持続、永続性に置き換えることが必要であると思う。法令や行政、技術策だけではなく、自らのライフスタイルにまで踏み込まなくては、抜本的な対策にはならないと思う。どうすれば慣れ親しんできたライフスタイルを変えられるのか。物と便利さを追い求めてきた私たちには、手間のかかる生活に戻ることだけに、かなりの覚悟がいる。
 名案は浮かばないが、自分たちの普段の生活の中にしか回答のないのも確かなことと思う。自分や皆でできることを模索しながらネットワークを作り、職業や世代を越えた多様な意見の反映・問題の共有・合意を図り、少しずつ進展させていくことが大事ではないかと思う。

(「生涯学習しもすわ」 第334号再掲)



『湖の自然とのつきあい方』

長野県水産試験場諏訪支場 主任研究員
武居 薫

 諏訪湖もアオコの減少など水質改善の効果が実感されるようになってきました。浄化施策の一つとして湖岸の再自然化の試みも進められていますが、水辺の風景が再生されてもそこに生き物が戻らなければ意味はありません。いったん失われた自然をどう育てていくかは、地域の人々がどう考え、これからどう関わっていくかによって大きく左右されると思います。
 自然との関わり方で重要なのは、過保護にしないことと自主性を尊重することです。でも放任ではありません。そうです、「子育て」と同じなのです。自然の再生にあたっては、ある程度の管理は必要ですが過度に手をかけすぎることは禁物です。自然を公園のようなイメージで考えていないでしょうか。雑草のない自然を思い浮かべてはいないでしょうか。ヤブもぬかるみもそれぞれに生き物にとって意味を持っているのです。人間の感覚での整然とした画一的な自然は生き物にとっては住みにくいのです。
 水辺のヨシやマコモはかつては生活の中で採取・活用され、それが効果的な自然の管理になっていました。里山の自然と同じように、放って置いても、刈りすぎても群落を維持することはできませんし、刈取る場合にも時機を選ばないと野生に対して悪影響を与えることになります。広域での画一的な刈取りなどは自然にとっては危機的な状況でしかないのです。行き過ぎでない適度な管理が必要なのです。
 一つの例ですが、野鳥の餌になる木を植えるのと餌台を作って餌を与えるのとは同じ事でしょうか。後者では野生の生活を人間の都合で左右しようとしていると言えないでしょうか。もちろん、餓死するような恐れのある時の手助けは必要ですが、野生生物を集めるために安易に餌を与えるのではなく、野生生物の生息可能な環境を与えて、「おいでいただく」ことが本来の自然との関わり方ではないでしょうか。人間にとっての都合ではなく、生き物にとっての意味付けを考え、野生を尊重することを忘れてはならないのです。
 普段は自主性(自然の営み)に委ねて在来種の回復を見守ってやる。在来種の生育に適した環境が保てなかったり、外来種によって侵害されたりしている時に手助けしてやって本来の諏訪湖の自然の回復を支えてやる、こんなことが自然への関わり方の基本なのではないでしょうか。

(「生涯学習しもすわ」 第334号再掲)



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